著者：とわの杜

香典返しや葬儀返礼品を選ぶとき、「どこまでがマナーなのか」「何を選べば失礼にあたらないのか」と迷った経験はありませんか。

家族葬や直葬が増える近年、返礼の形式も多様化しています。その一方で、参列者や親族に対して「不快感を与えない配慮」や「宗教や地域ごとのマナー」への理解がますます重要になっています。

例えば、全国調査によると香典返しの品物として最も選ばれているのはカタログギフトで、全体の約6割が利用しているとの報告もあります。しかし、同じカタログでも内容や金額の相場、表書きの書き方ひとつで印象が大きく変わることをご存じでしょうか。

本記事では、香典返しや葬儀返礼品にまつわる「基本のマナー」「失敗しない選び方」「相場や品物の注意点」「最新のおすすめトレンド」までを、葬儀社経験者や専門ショップの最新事例を交えて徹底的に解説します。

読後には、費用や失礼を恐れることなく、安心して準備ができる知識と判断基準を得られるでしょう。葬儀後の不安を解消し、礼を尽くしたいと願うあなたに向けた、完全ガイドです。

そもそも「葬儀の返礼品」とは？香典返しとの違いをやさしく解説

返礼品と香典返しの意味と目的の違い

葬儀の場面で「返礼品」や「香典返し」という言葉を耳にする機会は多くありますが、この2つは目的やタイミングが異なります。返礼品は「会葬御礼」とも呼ばれ、葬儀や通夜に参列してくださったことへの感謝の気持ちとして贈る品物で、参列者全員が対象になります。一方、香典返しは香典をいただいたことへのお返しであり、対象は「香典を包んでくださった方」に限られます。

返礼品は、葬儀当日に受付などで手渡しすることが多く、内容としてはタオルやお茶、簡単なお菓子など「消えもの」が一般的です。それに対して香典返しは、基本的に四十九日法要が終わったあとの「忌明け」の時期に、郵送や訪問によって贈るのがマナーとされています。

また、香典返しには金額の目安があります。一般的には香典の半額程度を目安とする「半返し」が基本とされており、地域や宗派によっては「3分の1返し」が好まれる場合もあります。返礼品にはこのような金額基準はなく、すべての参列者に同じ品物を用意するのが通常です。

さらに、香典返しには挨拶状を添えるのが一般的で、文面には忌明けの報告や故人に対する感謝の言葉が記されます。返礼品には「御礼」と書かれた短冊や、簡単なのし紙が添えられる程度で、形式の違いも明確です。

以下は返礼品と香典返しの違いをわかりやすく整理した比較表です。

区分	返礼品（会葬御礼）	香典返し（忌明け返礼）
渡すタイミング	葬儀・通夜当日	四十九日法要後
対象者	参列者全員	香典を包んでくださった方
金額目安	一律（500円～1,000円程度）	香典の半額または3分の1程度
のし紙の表書き	「志」「会葬御礼」など	「志」「忌明志」「満中陰志」など
渡し方	受付などでの手渡し	郵送または訪問にてお渡し
挨拶状の有無	原則なし	通常、挨拶状を添えることが多い
主な内容	お茶、タオル、菓子などの実用品	カタログギフト、高級食品など

このように、返礼品と香典返しは、目的や相手、金額、時期などすべての点で異なります。それぞれの意味を理解し、正しい形式でお渡しすることが、ご遺族としての礼儀であり、参列者への誠意を示すことにもつながります。

葬儀の場面で使われる返礼品の種類と用途

葬儀で用いられる返礼品は、地域や宗教、葬儀の規模、ご家族の考え方によって異なりますが、最も重要なのは「失礼にならない品物」を選ぶことです。返礼品は、参列してくださった方への感謝の気持ちを形にしたものであるため、派手すぎず、日常生活で役立つ実用品が好まれます。

特に人気が高い返礼品としては、お茶やタオル、洗剤、菓子類、海苔などの食品詰め合わせが挙げられます。これらは「消えもの」と呼ばれ、形に残らないため、弔事にふさわしいとされています。とくに今治タオルや銘茶のセットなどは、高級感がありながらも日常で使えるため、幅広い年代の方に喜ばれています。

近年では、家族葬や一日葬といった小規模葬儀の増加に伴い、返礼品も簡素化される傾向が強まっています。香典を辞退する葬儀も見られるなかで、返礼品だけは最低限お渡しするケースが多く、500円〜1,000円程度の品物が一般的です。

以下に、よく選ばれている返礼品とその理由をまとめました。

品目	選ばれる理由
お茶	年齢を問わず誰にでも好まれ、香りや見た目が上品で失礼がない
タオル	実用性があり、品質が良い今治タオルなどは特に人気が高い
洗剤	どの家庭でも使う日用品として無難で実用的
菓子類	甘いものは高齢者にも子どもにも受け入れられ、賞味期限も長めで安心
海苔・食品詰合せ	保存が効き、贈る相手の家庭環境を問わず使いやすい

葬儀返礼品を選ぶ際には「実用性」「控えめな上品さ」「消えもの」という3つのポイントを意識することが大切です。贈る相手の生活スタイルや好みに寄り添った選択をすることで、感謝の気持ちが自然と伝わります。

返礼品や香典返しは「いつまでに」用意すべき？宗教別・時期別の完全ガイド

当日返し・忌明け返し・後日返しの違いとタイミング

葬儀や法要の場で、返礼品を贈るタイミングにはいくつかの種類があります。それぞれに適切な場面や意味があります。どのタイミングでどのように返礼品を贈るべきかは、葬儀の規模や形式、宗教的背景、地域の風習によって異なるため、しっかりと理解しておくことが大切です。

当日返しは、通夜や告別式当日に会葬者に返礼品を手渡す方法です。受付で香典を受け取った後に、その場で「会葬御礼」として渡すのが一般的です。品物としては、お茶や菓子、タオルなどの消えものが中心で、金額の目安は500円から1,000円程度が多く、香典の金額にかかわらず同じものを用意します。この方法は、香典返しを簡素化したい場合や、葬儀後の手間を軽減したい遺族に選ばれる傾向があります。

忌明け返しとは、四十九日法要を終えた後に香典をいただいた方へ返礼する方法で、最も伝統的な形式とされています。返礼の相場は香典の半額を目安とする「半返し」が基本で、品物の選定には慎重さが求められます。高級なお茶やカタログギフト、海苔・銘菓などが一般的です。また、挨拶状を添えて送るのがマナーで、亡くなった方への想いや遺族からの感謝が伝わるよう丁寧な文章が求められます。

後日返しは、葬儀当日に返礼を行わなかった場合や、香典が後日届けられた場合に対応する方法です。遠方の方や事情により葬儀に参列できなかった方から香典をいただいた場合にも、この方法が選ばれます。返礼は郵送が基本となり、挨拶状と共に品物をお送りする形式が一般的です。

それぞれの返礼タイミングについて、以下の表に整理しました。

区分	渡す時期	対象者	金額目安	渡し方	主な品物
当日返し	葬儀・通夜当日	会葬者全員	一律500〜1,000円程度	受付で手渡し	お茶、菓子、タオルなど
忌明け返し	四十九日後	香典を包んだ方	香典の半額（半返し）	郵送または訪問	カタログギフト、銘茶、海苔など
後日返し	香典を受領後	弔問や郵送で香典を受け取った方	同上	郵送	忌明け返しと同様の品物

返礼品のタイミングを間違えると、かえって失礼になってしまうこともあるため、宗教的な慣習や地域性を踏まえて選ぶことが重要です。葬儀社や百貨店の返礼サービスなどを活用することで、マナーを守った適切な対応が可能となります。

宗教ごとの返礼タイミング（仏教・神道・キリスト教）

返礼品を贈るタイミングや方法は、宗教の違いによっても異なります。それぞれの宗教の考え方や儀式のスケジュールに応じて適切に対応することが、相手への敬意を示す大切なポイントとなります。

宗教によって考え方や表現が大きく異なるため、誤った表書きやタイミングで返礼をしてしまわないよう、事前に確認することが大切です。葬儀社や専門の返礼品サービスでは、宗教別のマナーに則った商品選びや表書きのサポートも受けられるため、迷った際には相談してみると安心です。

浄土真宗における香典返しの正しい時期とマナー

浄土真宗では、香典返しのタイミングにおいて他の仏教宗派とは異なる特徴があります。一般的な仏教宗派では、忌明けとされる四十九日（七七日忌）を過ぎてから香典返しを行いますが、浄土真宗では「故人がすぐに極楽浄土へ往生する」との教義に基づき、忌明けという概念が存在しないとされています。そのため、四十九日を待たずに香典返しを済ませる「当日返し」や「即日返し」が主流となっているのが特徴です。

返礼品の内容については、他宗派と同様に消えもの（お茶、石鹸、菓子など）が好まれますが、最近ではカタログギフトも選ばれることが増えてきました。特に百貨店や専門ギフト会社では、浄土真宗に適した表書きや包装に対応したプランが用意されており、選ぶ際の手間も軽減されています。

以下に、浄土真宗での香典返しに関するポイントを整理した表をご紹介します。

項目	内容
忌明けの考え方	忌明けの概念なし（死後すぐに極楽往生するという教義）
香典返しのタイミング	当日または葬儀直後に行うことが多い
挨拶状の文例注意点	成仏・冥福などの仏教用語は使用せず、「ご厚志への感謝」等を用いる
返礼品の選び方	消えものが主流。カタログギフトや百貨店返礼品も人気上昇中

このように、浄土真宗における香典返しは、他宗派とはタイミングや表現が異なるため、正しい知識をもって対応することが大切です。宗派特有のマナーに配慮した返礼は、遺族の誠意をより丁寧に伝えることにつながります。

返礼品選びで絶対に失敗しない方法とは？選び方とチェックリスト付き

返礼品選びの3原則（宗教・地域性・関係性）

返礼品を選ぶ際に最も重要なのは、贈る相手との関係性や地域の風習、宗教的なマナーにしっかり配慮することです。どれか一つでも配慮を欠くと、せっかくの感謝の気持ちが正しく伝わらず、場合によっては失礼に受け取られてしまうこともあります。ここでは、絶対に外せない3つの原則を紹介します。

第一の原則は、宗教に合わせた配慮です。たとえば仏教では「忌明け」の意味を大切にし、四十九日を過ぎてから香典返しを行うのが基本とされています。神道では五十日祭が節目となり、キリスト教ではそもそも忌明けという概念がないため、葬儀の当日にお礼状や記念品で感謝を伝えるケースが多く見られます。このように宗教ごとの違いを理解し、それに適した返礼品と表現を選ぶことが基本中の基本です。

第二の原則は、地域性への配慮です。返礼のマナーは全国で統一されているわけではなく、地域によって常識や風習が大きく異なります。たとえば、関西圏では当日返しの文化が強く根付いており、カタログギフトや高級茶を当日に持ち帰ってもらうケースが多く見られます。一方、東日本では忌明け後の郵送返礼が主流で、挨拶状と一緒に贈る形式が一般的です。こうした地域差を理解し、相手の地域に配慮した選び方を心がけることが求められます。

第三の原則は、贈る相手との関係性です。たとえば職場関係の方と親族では、選ぶべき品物の質や価格帯が大きく異なります。親しい親族や目上の方には、品質の高いカタログギフトや銘茶など、しっかりと感謝を表す品を選ぶべきです。一方、職場の同僚などには、控えめながらも丁寧な印象を与えるお菓子や実用品が適しています。

以下に、返礼品選びのポイントをチェックリストとしてまとめました。

チェック項目	内容例
宗教の確認	仏教・神道・キリスト教など。表書きも適切か確認する
地域の風習を把握	関西は当日返し、関東は忌明け返しが多い
相手との関係性を明確にする	親族、上司、友人、職場の同僚などで品物の種類や価格帯を調整
消えものを選ぶ	食品・お茶・洗剤など形が残らない実用品が無難
価格帯を決める	半返しが基本。香典の金額に対して3割〜5割を目安に設定

このように、宗教・地域性・関係性の3点を意識するだけで、返礼品選びでの失敗リスクを大幅に減らすことができます。返礼の目的は「感謝の気持ちを正しく伝えること」であり、そのためには形式や慣習を尊重する姿勢が不可欠です。

失礼にあたる可能性がある返礼品とは？

返礼品は故人に代わって遺族が感謝の気持ちを伝える大切な手段ですが、選び方を間違えると、相手に不快な印象を与える可能性があります。特に贈ってはいけないとされる「タブーな返礼品」は、宗教的・文化的な理由や社会通念に基づいているため、十分な配慮が必要です。

まず代表的なタブーとされる返礼品として挙げられるのが「金券類」です。商品券、図書カード、ギフト券、QUOカードなどは現金と同等に扱われるため、弔事の返礼品としては不適切とされています。これは、金銭で感謝の気持ちを直接返す行為が「品位を欠く」と見なされることが多いためであり、受け取る側によっては「軽んじられている」と感じてしまう可能性もあります。

次に避けるべき品目として「肉類や魚介類」があります。これらは生臭物とされ、特に仏教の教義では「殺生」を連想させることから、葬儀関連の贈答には適しません。加工品であっても、ハムやソーセージなどの肉類詰め合わせは、宗教や年配の方を中心に嫌がられるケースがあります。

また「アルコール類」も返礼品としては慎重な判断が必要です。お酒を好まない方や宗教的に飲酒を禁じられている方もいますし、通夜や告別式の場において「祝い事」を連想させる贈り物は相応しくないとされています。特に「ビール券」や「ワインギフト」は避けるのが無難です。

さらに、慶事に用いられるような「紅白模様のパッケージ」や「華美な装飾」も控えるべきです。葬儀の返礼品は「慎ましさ」や「控えめな感謝」を表現するのがマナーであり、豪華さを演出するようなラッピングや金銀の派手な表書きはかえってマイナスイメージを与えかねません。

実際には、贈る側の誠意が大前提ではありますが、受け取る方の感性や宗教的背景によって「失礼だ」と受け止められることがあるため、無難な選択を心がけることが賢明です。

返礼品を選ぶ際には、カタログギフトや定番の食品（お茶、海苔、煎餅など）、洗剤などの「消えもの」が最も無難とされており、幅広い層に喜ばれやすい特徴を持っています。特にカタログギフトは、受け取った方が自分の好きな品を選べる点で、年齢や嗜好の違いをカバーできるメリットがあります。

贈る相手に不快な思いをさせないためにも、返礼品選びでは「何を贈るか」以上に「何を避けるか」の視点が重要です。信頼できるギフト専門店や葬儀社に相談しながら進めると、より確実な対応が可能になります。

まとめ

葬儀の返礼品選びは、形式に縛られつつも「故人の感謝の気持ちをどう伝えるか」という想いが問われる繊細な作業です。香典返しや会葬御礼のマナーを守りながらも、参列者の立場や宗教、地域の風習をふまえて適切な対応が求められます。

近年ではカタログギフトの利用率が全体の約6割に上るなど、定番化が進む一方で、「金券は避けるべきか」「家族葬で返礼品は必要か」といった悩みは尽きません。日本消費者協会の調査によれば、返礼品の相場は香典の半額程度が一般的で、地域によっては三分の一返しが主流となっているケースも確認されています。

また、法要の時期や忌明け後の対応によって「当日返し」「後日返し」「辞退の意思表示」など選択肢も分かれます。葬儀社の多くが推奨するのは、品物の質と共に「挨拶状」や「礼状」などを添えて、心を込めた形で伝えるスタイルです。印刷か手書きか、封筒の向きや表書きまで気配りすることが、形式的であっても受け取る側の印象に残る大切なポイントとなります。

この記事では、実務経験のある筆者が実際の現場で得たノウハウと、公的機関のデータを交えながら、選び方や避けるべきマナー違反、宗教別の注意点、現代的なメールやLINEでの配慮まで幅広く解説しました。内容を実践すれば、予算内で無理なく、かつ感謝の気持ちを的確に伝える返礼品選びができるようになります。

大切なのは「形式を守る」だけでなく、「受け取る相手を想う気持ち」を形にすること。この記事が、葬儀後の対応に不安を抱える方にとって、安心して準備を進める一助となれば幸いです。

よくある質問

Q. 葬儀の返礼品の相場はどれくらいですか？香典金額に応じて選ぶべきなのでしょうか
A. 一般的に、返礼品の相場は「香典の半返し」とされており、香典が一万円の場合は三千円から五千円程度が目安です。三分の一返しが主流の地域もあり、会葬返礼品としては五百円から千円程度の品物が選ばれることも多くなっています。香典の金額が高額になる場合はカタログギフトや高級食品詰め合わせが選ばれる傾向にあります。地域の慣習や故人との関係性に応じて適切な金額を見極めることが大切です。

Q. 香典返しと葬儀の返礼品は両方必要ですか？それぞれの意味合いを教えてください
A. 葬儀の返礼品は、会葬者へ当日渡す「会葬御礼」の意味を持ち、香典返しは香典をいただいたことへの感謝として後日返礼するのが一般的です。両方が必要になる場合が多く、即日返しとしてまとめるケースもありますが、家族葬や直葬の場合は香典返しのみ、または辞退するケースも増えています。タイミングや費用の観点からも事前に葬儀社や地域の風習を確認し、適切な対応を心がけましょう。

Q. 宗教によって返礼品のタイミングは異なりますか？仏教とキリスト教ではどう違いますか
A. はい、宗教ごとに返礼品の贈るタイミングには違いがあります。仏教では四十九日の忌明けに合わせて香典返しを行うのが基本ですが、浄土真宗では即日返しが主流になるケースもあります。一方、キリスト教では「返礼」の概念そのものが薄く、会葬御礼として渡す程度にとどまることが多いです。神道では五十日祭を区切りとすることもあるため、それぞれの宗教儀礼と慣習に沿った対応が必要です。

Q. 返礼品に添える挨拶状は手書きでなければ失礼ですか？印刷ではだめでしょうか
A. 挨拶状は印刷されたものでもマナー上まったく問題ありません。現在では全体の約80パーセント以上の葬儀で、挨拶状はテンプレートを利用した印刷タイプが使われています。ただし、親族や職場の上司など特に丁寧な対応が求められる相手には、手書きで一言添えることで心のこもった印象を与えることができます。封筒の選び方や表書きにも配慮し、礼状が礼を失さないよう準備することが大切です。

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